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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(オ)6号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由は「原判決によれば上告人(控訴人)は昭和二二年一〇月一八日判決の送達を受け控訴状が第二審裁判所に到達したのが同年一一月四日であるから控訴期間経過後の控訴に付き不適法であるから控訴を却下する旨の判決でありますが上告人(控訴人)は昭和二二年一〇月二七日控訴状を大阪中央郵便局にて郵送したのでありますから通常ならば五日間にて第二審裁判所に到達するのであります其れが三日間遅延した為めに控訴期間を経過したのであります従つて原審裁判所に於ては上告人(控訴人)に対し原状回復の申立の猶予を与ふべき筈の処其の手続を為さしめずして控訴を却下したのは審理不尽の不法があるものであり原判決は取消さるべきものであります」というのである。

しかしながら、記録によると、本件の第一審判決が上告人(控訴人、被告)に送達せられたのは昭和二二年一〇月一八日で控訴状が控訴代理人宮武太から原裁判所に提出されたのは同年一一月四日であるから、原裁判所はこの控訴を控訴期間経過後になされた不適法な控訴でその欠缺が補正できないものとして、却下したこと明かである。そして上告人は控訴期間の不遵守について原状回復の申立をしたのではなく、またこの期間不遵守が上告理由記載のような事情から生じたにしても、通信交通の著しく渋滞しがちな現時わが国内事情の下にあつては本件控訴状の郵送遅延は必ずしも当事者の予想し得ない程度のものとはいい得ないのであつて、これを以て直ちに原状回復の理由となすには足りないのである。従つて法律上裁判所において上告人(控訴人)に対し特に原状回復申立の猶予を与える手続を採る義務もないのであるから、原裁判所がこの点について何等特段の手続をしないで昭和二二年一二月二六日に至り前述のような控訴却下の判決をしたことには何等の違法はなく、本件上告理由は採用し得ない。よつて民事訴訟法第三九六条、第三八四条に則り本件上告を棄却すべきものとし、訴訟費用は同法第九五条、第八九条により上告人に負担せしめ主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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